3.1 高圧一括受電にした場合と、対する小売りの魅力とは
高圧一括受電では、電力販売業者のリース方式であれ、管理組合の資産にして運用する方式であれ、管理組合総会で組合員総数の3/4以上の議決と各住戸毎の東電契約解除の同意が必須になります。
一旦導入して、10年後などに止める場合はどうかを想像するに、初期費用が高額な設備であること、契約を「電力料金」に変えたこと、管理組合総会でまた3/4以上の決議が要ることを考慮すると、高圧一括受電は、現時点での選択が、10年後以降の選択肢も狭めるものであることがわかります。
設備を組合資産にした場合は、30年保つといわれる設備であり、生じる余剰メリットも含めると、継続の選択しかないと思われます。
電力販売業者による一括受電の場合では、以下の選択が可能ですが、
1. そのまま、契約を続け、設備更新時も同一業者の10年縛りを甘受する。(費用0)
2. 設備を安価に買取り、組合資産にして運営する。但し、新規業者の設備が東電同様に保つかどうかは不明。
3. 他の販売業者に変更する。(費用は多分0)
4. 低電圧の小売りに戻す。その際、設備をどうするかは金額も含めて、全く不明。
リスクと手間を考えると、一番楽である1.のケースになると思います。
途中で止めようとすることは、3/4以上の議決と高額の違約金または負担金の支払いがネックになるので、ほとんど可能性はないでしょう。
このように、販売業者側からみると、一旦導入されれば、長年継続利用されることが期待できますから、マンションの人が減らない限りは安定した計画的な利益を保持できます。
一方、自由化された個別家庭相手の小売りは、競争市場であり、薄利多売やコスト低減など常に企業努力をしないと、やっていけない環境です。こちらの方は、消費者にとって明らかに有利なベースです。
高圧一括受電販売と比較して、そのいろんな違いを挙げると、次のようになると思います。
比較項目 | 高圧一括販売 | 小売り販売 | どっち? |
選択肢 | JCOM+3%など | キャンペーン、セットプラン、キャッシュバックなど工夫が多様 | 小売り |
契約縛り | 10年 | なし多、半年、1年、2年あり | 小売り |
解約の違約金 | 高額 | なし多、または、¥1,080、¥2,160など少額 | 小売り |
契約手続き | 管理組合一括契約、総会3/4以上の賛成 全住戸の東電解約の承諾 | 個人。簡単に新規変更できる | 小売り |
リスク | トラブル時、10年後等の不明さ | 設備負担等予想外出費なし。トラブル時は玄関先までカバー | 小売り |
保守・点検 | 3年に1回長時間の停電 | 停電なし! | 小売り |
消費者保護 | 電気事業法対象外(注1) | 業者は電気事業法の対象で消費者に説明責任あり | 小売り |
お得率 | 専有部 業界標準が5%、JCOM割り+3%など | 使用量によるが、意外にお得で10%近辺もあり(注2) | 小売り |
共用部キュービクル (高圧受電設備/組合資産) | 専有部と一括契約のため、電気代削減不可 | 新電力の選択や契約内容の変更で10%ほど電気代削減(設備変更なし) | 小売り |
市場の特徴 | 電灯/電力料金価格差に依存する経営 | 8兆円規模。新規参入で携帯、スマホのような競争市場が期待できる | 小売り |
自由化 | 2005年以降から。託送料を小売業者負担にしたい? | 2016年から。2020年の送配電自由化で託送料(電線利用料)が自由化 | ? |
選択の自由度 | 組合員の総意で一つのみ | 他人の都合に合わせる必要なし。自分の好きな買物ができる | 小売り |
(注1)
経済産業省は「電力の小売営業に関する指針」(平成28年1月)において、高圧一括受電は電気事業法上の規制の対象外であるが、本指針が小売り電気事業者(規制対象)に求める需要家保護策と同様の処置を行うことが望ましいと述べています。すなわち、高圧一括販売業者においても、適切な情報開示、契約説明、書面交付が適時行われ、需要家の利益を害さないようにすることを要望しています。但し、制度的な監視対象ではないので、実態把握は?です。
(注2)
電力使用量毎のお得率を下表に掲げます。普通は総務省の家計調査が標準ですが、もっと下のクラスでも優に8%を越えるお得率です。
小売りなのに頑張ってますね!
条件は、リスト中2番手を選択、特典/ポイント込みの実質、2年縛り(解約料¥1,080)
平均使用量[kWh/月] | 年換算値[kWh/年] | 1年間 | 2年間 | 5年間(ほっといたケース:参考まで) | 注記 |
418.6 (¥11,432) | 5021 | 10.7% | 9.6% | 9.2% | 総務省家計調査: 一世帯(2人以上)当たり電気使用量 2015年 |
350 (¥9,428) | 4195 | 9.8% | 8.4% | 7.9% | 東京電力: 40Aに限った従量電灯A,B契約口の単純平均 |
300 (¥8,028) | 3597 | 8.9% | 7.4% | 6.7% | 「一括受電業者の実績値データ」のマンション平均値ですと。 |
まとめると、小売りの場合は、スーパーにキャンペーンやセールがあるのと同じ目線で電気の買い物ができるのが、良いところでしょう。卸問屋から買うのではないところも似てますね。表での確認では、小売りの魅力の方が断然大きいですね。
でも選ばないといけないから、昔の黒電話料金支払いのようなつもりだと、やたら邪魔くさい制度に感じるでしょうね。