高圧一括受電の「差額」メリットとその活用

2.1 高圧受電とはなに?
一般家庭に入る電気はAC100V/200Vですが、工場や病院などは電力消費量が多いので実用的な太さの引込み線にするために電圧を高くして配電します。そして、敷地内の変電設備で電圧を下げて利用します。
これを高圧受電といい、引き込む電圧は通常6.6kVです。契約電力が50kW~2000kWの場合に適用となります。マンションなどでも100世帯が入り一軒50A以内で100/200Vを使うとすれば、100×50×200=1000kVA、つまり1000kW近辺になるので当然高圧受電となります。水道用ポンプや通路の照明など共用部の電気についても、50kW以上の契約ならば高圧受電になります
マンションの専有部、つまり、各家庭用の電気について、電力会社が高圧受電の変電設備を設置しますが、その変電設備から配電される各家庭への電気は、普通の引込みと同じくいつもの従量料金となります。以上の説明を図にすると、こうなります。

電気室(例)
屋外キュービクル(例)

2.2 2005年の電力自由化と高圧一括受電
元々、高圧=大口需要家向けの「電力料金」は一般家庭向けである「電灯料金」より3割ほど安いです。
2005年から高圧受電の自由化が始まり、これ以降、工場に限らず、マンションでも居住者個々の契約をやめ、東電以外の電力販売業者と一括契約を結ぶことで安い「電力料金」で電気を供給してもらうことができるようになりました。(東電とも2014年から一括契約ができるようになったとのことです。) これが、現在も続いている高圧一括受電というものです。
なお、工場や病院など元々「電力料金」で安いのですが、2005年以降は東電の契約とは異なって契約スタイルが多様となり、更に電気代の削減ができています。(2016年の小売り自由化以前の、過去の自由化では効果6兆円以上の効果があったと試算: 経済産業省 2015年11月)

2.3 電気料金の違いによるメリット
では、その「電力料金」では「電灯料金」との差はどれほどなのか概算してみます。
以下の4つの条件とします。
- 電灯料金: 26円, 電力料金: 19円  -27% 資源エネルギー庁 電気料金の水準(平成27年11月)より
- 従来の電気料金 13万円/年     平均420kWh/月相当 (総務省の家計調査と価格コムから)
- マンション戸数: 400
- 累積年数: 10年
従来料金は、   130,000×400×10=520,000,000円
累積差額(27%)  520,000,000×0.27=140,400,000円 (1億4千40万円)

よって、マンション全体では、10年間で1億5千万近い料金差額となります。
すごい金額ですよね。マンション全体でお金をこれだけ節約できるわけです。
これは各家庭用であるマンション専有部の数字です。共用部も電力会社や契約を変えるなどの策を実施すれば、共用部も電気料金を削減でき、もっと節約できます。例えば、共用部の電気代が年間600万円とすると、-10%で60万円の節約になります。

2.4 高圧一括受電契約の方法(リース方式と買取り方式)
残念ながら、「電力料金」に契約を変えても上記の差額分が丸々私たちの手に入ってくるわけではありません。電力会社の利益分、設備の維持/点検費用、保険金、料金請求事務等々の諸経費が引かれます。従来から工場などは自前でやっていることですが、会社組織でないところはおいそれとはできません。

そこで、電力販売業者が、いわば、リース業者となって、東電の設備を撤去し自前の変電設備に置き換え、設備点検も含み雑務を一切請け負うビジネスを始めました。これで、マンションでは、電力会社と各家庭毎の小口契約ではなく、代わりに電力販売業者が電力会社と大電力の大口契約を結ぶ、各家庭は電力販売業者と個別契約するというスタイルをとれるようになりました。

これは見方を変えると「電力料金」と「電灯料金」の差額分を、電力販売業者と各家庭が分け合う形です。
しかし、一括受電業者らは、2016年の電力小売り自由化以後も以前の料金設定を変えていないように見えます。差額分約30%の内、消費者分は5%で、残りの25%を自分たちの取り分にしています。消費者分を+αする業者もいますが、それは協力会社のサービスによる割引きであって、差額の取り分自体を減らすのではないようです。

いずれ競争が割合を変えるとしても多分相当に先の話なので、今の時点では私達は別の方法も考慮する必要があります。それは、変電設備を借り物ではなく私達の所有物/資産にすることです。
実はマンション共用部の変電設備は始めから私達の資産です。点検は自分ではできないので、関東電気保安協会などに外注しているのが一般です。
マンション専有部の変電設備についても、東電から有償譲渡してもらい、共用部と同じく私達の資産としその点検や事務作業を外注化することもできます。電力会社との一括契約を管理組合が直接行うので、設備の買取り費用は発生しますが、電力販売業者による中間マージンは発生しません。また、点検、事務作業などの外注費用は透明になります。(契約する電力会社が新電力なら電気代はもっと安くなります。管理組合に支払う住戸の電気料金の内容は自分達で決めれます。)
もう一つ言えるのは私達は業者と違い、利潤追求する必要はありません。利潤相当分をを節約に回せるので、各家庭一律10%以上も当然可能性があります。設備はメンテしながら30年くらい保つといわれていますので、初期費用をクリアしてからはマンション修繕費用の補填にも使えるのではないでしょうか。

平成28年2月26日 一般社団法人 埼玉県マンション管理士会「電力自由化とマンション」から抜粋
注: 100世帯を例としている。初期費用、削減額は400世帯ならその4倍程度になると推定される。
この例は専有部削減の場合で買取方式にすると-15%以上になることを示す。
平成28年2月26日 一般社団法人 埼玉県マンション管理士会「電力自由化とマンション」から抜粋
東電のマンション変電設備の譲渡説明(一部)を示します。