小売電気事業者を選ぶ前に知ることは? - 年間の使用量

以前に「小売自由化と価格」の項で簡単に触れましたが、念のため料金についてもう少し詳しく解説したいと思います。電力小売事業者を選定する前に、まずは自分の家の現状を把握する必要があります。その際に確認しておくことを以下に述べます。

1. あなたの電気使用量は月によって異なる
当たり前ですが、月々の電気使用量は違います。夏はエアコンを使い、冬は電気こたつやエアコンを用います。総務省家計調査の電気月別使用量グラフ(「小売自由化と価格」のグラフを参照)をみると、センター値に対して大体± 25%の変動があります。例えば、400kWh/月がセンター値とすれば、500~300kWhの間で電気を使っていることになります。使う時とそうでない時で200kWhも差が出るんですね。これはおっきいですね。
ですので、300kWh/月ほどがセンター値の方は、300kWhを超えた分の料金は300kWh以下の料金より高い(3段料金)ことに注意しましょう。計算では、300kWhで変動なしの場合と比べ最高で年間2000円近く料金が多くなる可能性があります。

2. 電気料金は月々変わる
また、実は、電気料金は同じ使用量であっても、月々請求額が変わります。東京電力の電気料金の区分と料金単価を表1(TEPCOでんき家計簿から作成)に示します。昨年6月からメインの料金が少し上がり、再エネ課金(*1)単価は年毎(5月~)に変わり、燃料費調整単価は月々変化します。

2016年1月から2017年7月までの約1.5年で、電気代と電気使用量の関係がどう変わったかを調べてみます。
電気代が¥9,500と¥8000の場合の電気使用量[月]を表1から逆算します。その結果を表2に示します。(*2)
同じ電気代でも、電気使用量は50kWh(1,500円/月ほど!)違っていることがあるのがわかります。(2016年1月⇔2017年1月)
つまり、電気代だけをみて、電気を節約したとか使ったとかを判断してはいけないという事です。

(*1) 再エネ課金: 「再生可能エネルギー促進賦課金」を略す。
(*2) 例として、2017年7月 350kWh/月の計算の詳細を図1に示します。

図1 2017年7月 350kWh/月の計算詳細

3. 料金シュミレーションの確からしさ
次に価格.comやエネチェンジのシュミレーションです。郵便番号、家庭の人数、外出度合い、*月の使用量か支払い金額などを入力します。しかし、これで、あなたの家庭の年間の消費電力が本当につかめると思いますか?
総務省統計局のデータを基にしたシュミレーションなので、あなたにとっては、当たらずとも遠からずの程度です。たった、ひと月の入力で、あなたの家の年間の変動や総使用量が解明されるとしたら、逆に怖くありません?
自分の家庭の月毎の実績データを入力すべきです。

図2 価格.comシュミレーション条件: 各月の使用量が個別入力可
以上により、状況に応じて何ができるかを区分けしてみました。
知っている事できる事
今月か先月の料金は知っている。あるいは、 今月か先月の使用量がわかる。
ここ二、三ヶ月の平均でなんとか、、
大雑把につき、まあ、目安にはなるかというところです。
とりあえず良さげなとこを選び、1年後にそのデータをみて、もっと自分の家庭に合うとこを探すのが方策かと思われます。
家計簿で月々の料金を付けている少し面倒ですが、東電の過去の単価(表1)から、使用量-料金のEXCELグラフまたは表を作れれば、逆に料金から使用量を把握することができます。
高校生の子供に頼めば、きっとできるかと思います。使用量がわかれば、精度の良いシュミレーションができます。
なぜか昨年の年間利用量がわかる価格.comなどのシュミレーションで年間使用量が合うように再計算しながら月の使用量を調整します。
月毎の使用量の変化は平均的だと仮定することになりますが、年間使用量は押さえているので、そこそこ実際に近い検討ができると思われます。
一年間の領収証を持っている。または、東電の「家計簿」に入っているちゃんとさがすと領収証が出てくる家庭は、実は多いのではないでしょうか。
価格.comなどのシュミレーションで、月ごとに使用量を記載していきます。それにより、どの事業者を選ぶとどれだけ下がるかを精度良く確認することができます。
後になって、ちょっと予想と違ったねという事態は避けられます。

まとめ
通常、目がいくのは直に電気代が高い/安いですが、どの使用量で、というのが基本です。私たちは電気代をみて電気の使用量を自由に変えることはできません。必要に応じて電気を使い無駄な使用はなくす、電気代はその結果です。無理して必要なものまで削るのは生活の質を下げ、不健康になるだけです。今は使用量を変えずに安くできる選択肢があるわけで、あるいは、特典やポイントなども含めて業者を適切に選べる機会や楽しみがあるともいえます。
その意味でしっかり現状把握するのは損ではありません。頑張ってみませんか。