新型コロナ昨年の特徴とこれから

2024年1月元旦の能登地震は北陸地震と言ってもよく、石川、富山だけでなく佐渡や新潟まで被害が及びました。冬場ゆえ早期の復旧は不可能で、息の長い支援を全国から届ける事が重要です。
被災者の皆様が二次被害を避けられるように祈念いたします。

1 新型コロナ第9波の特徴と流行の規模
2022年は第6波、第7波、第8波と続き、2023年は第8波の収束以降は第9波のみでしたが、5月から10月初旬までと長く続きました。
今でこそ、半数の人がマスクを着用していますが、昨年は、ウイルスの感染力は以前より拡大しているのに、マスクをしている人は1割程度という状況でしたので、長引いたのもうなずけます。
また、第9波の流行の規模は、第8波よりも大きかったと思われます。
5月の2類から5類移行に伴って、全数把握から定点把握に感染状況の集計が変化しました。定点把握では全国約5,000の定点医療機関で確認された患者数が週毎に報告されます。この医療機関の内訳は、インフルエンザの定点把握と同じく小児科3,000に内科2,000です。つまり、定点把握は子供の方に偏っていることになり、全数把握と比べて成年層の患者数は少なめにならざるを得ません。
しかし、神奈川県(図4)や東京都(図5)の患者数推移グラフでは第9波の規模は第8波と同じかそれ以上です。つまり、実際の感染者数はこれまでで最大規模という可能性すら考えられるのです。
ほとんどの人がマスク無しの無防備状態で、人の移動量や混雑もコロナ前に戻っていましたから、新型コロナの流行では、一番感染拡大が容易な状況であったと言えます。

図4 神奈川県新型コロナモニタリング情報から作成
神奈川県は2023年9月以降に、定点当たり患者数と第8波の全数把握感染者数/日の対比を変更したり期間を狭くしたりしました(図3と図6,図7を参照)。
そこで、元々の対比や開始日を維持したままの本グラフを作成してみました。
第9波は、第8波と同規模かそれ以上であった事が推定できます。
図5 東京都の定点当たり患者数
(東京都保健医療局 新型コロナウイルス感染症モニタリング分析資料より掲載)
東京都は過去の全数把握感染者数との対比はしていませんが、神奈川県とは違って、グラフ開始点は令和4年10月初めと変わっていません。
東京都も第8波よりも患者数が増加した印象がありますが、60歳以上の患者数は1.5倍ほど増えています。定点医療機関は小児科の割合が多いため、患者報告数は低い年齢層にバイアスがかかっていますが、それでも高齢者層の患者が多かったことは、第9波の規模が第8波を超えていた可能性を示唆しています。
図1 2022年全数把握による全国感染者数
一昨年は3回流行の波が起きました。一方、昨年の2023年は第8波収束後に第9波だけとなり、また長期になりました。
図2 神奈川県の第8波感染者数(全数把握)
NHK Web特設サイトのグラフの一部です。年末年始には新規感染者が1万人を超える日が頻発していました。
図3 神奈川県新型コロナモニタリング情報 (2024年1月11日)より
現在、流行は下火ですが増加中であることがわかります。1年間の表示なので、以前との比較ができなくなっています。

2 神奈川県と東京都のモニタリング
神奈川県と東京都はほぼ同一通勤圏であるので、新型コロナの感染状況は常に似通っています。
しかし、感染モニタリングの発表の仕方は、神奈川県はより事態を小さく見せたい意向があるようで、図6,図7に示すように、途中で患者数グラフを改変してしまいました。
一方、東京都は図5のように明快で掘り下げた発表をしている印象があります。
市民への情報は検討可能なレベルのものをしっかり公開してほしいものです。

図6 2023年9月以降のグラフ改変
定点当たり患者数と対比する「新規感染者数」を20%少なくしました。
全数把握の日別感染者12,000人に相当するのが定点把握の患者数20人であるとしてきたのを、9月以降のグラフでは、相当するのは患者数25人と改変しました。その理由は表明されていません。
その結果、以前よりも「新規感染者数」を20%少なめに見積もる事となりました。
青色の棒グラフは全数把握による感染者数を示しますが、定点把握患者数を示す茶色の線グラフが改変後では異様に低くなっている事がわかります。
図7 もう一つのグラフ改変- 1年間に限定
グラフ開始日を、現在から1年前に変更しました。以前の開始日は令和4年10月3日でした。そのため、全数把握による感染者数との比較が次第にできなくなりました。図6で示した「20%減らし」も、今の図3では確認できなくなりました。
図8 第9波 - 地域の定点当たり患者数
神奈川県や東京都は全国平均に近いですが、福島県や岩手県は1.5倍~2倍の患者数です。地域差が大きい事がわかります。
また、お盆の後が最大になっていて、人の移動が影響していることがわかります。

3 地域による感染者数の相違
定点把握は、地域毎の感染者密度をそこそこ対応しているといえます。
図8は私が関心のある地域をピックアップしたグラフですが、福島県や岩手県では、お盆時期の後に大きな感染ピークが起きた事がわかります。
首都圏よりも地方の感染密度が顕著に上昇するようになったのは2022年10月10日の旅行解禁以降です。
福島県の会津地方などは昨年のピーク時には全国平均のほぼ倍の定点患者数でした。現在も患者数増加は首都圏よりも急ピッチです。

4 今後のウイルス株
2024年のウイルス株は、感染力がこれまでで最強のJN.1になりそうです。
ワクチン接種は重症化防止がメインですが、現在のXBB1.5ワクチンはJN.1にも有効との事です。(*1)
ワクチン接種とともに、人混みに入らず、換気の良い場所を選び、不織布マスクを常に着用する基本対策は、今後も必要なようです。

(*1)医療機関のインフル・新型コロナ「二重クラスター」が増加 原因は?   倉原優
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8002a25e9f6d999769fd01a03ca1404cb37fda90

図9 新型コロナウイルスオミクロン株系統図
現在のワクチン接種はXBB1.5対応ですが、ウイルスの主流は日本でもJN.1に移りつつあります。
図10 東京都のウイルスゲノム解析
(東京都保健医療局 新型コロナウイルス感染症モニタリング分析資料より掲載)
XBB系統のEG.5が減少し、BA.2.86系統のJN.1の割合が増えてきています。
2024/1/19