新型コロナ- 増加に転じた新規感染者数とオミクロン株

1. 新型コロナの現状
2ヶ月間以上にわたり新規発生0の岩手県では、12月8日の定例会見で県知事が、今がチャンスだ、どんどん観光に来て、とアピールしていました。
横須賀市の累積感染者は、6379人(11月1日)から6394人(12月19日)と+15人であり、48日間で感染0の日は7割以上です。12月の新規感染者は12月19日現在3人です。
イオン八景店は10月以降、京急ストアでは10月5日以降の感染報告はなく、横浜駅周辺は10月15日以来12月まで新規感染者は0でした。

全国的にも、現在は最小だった第一波と比較しても更に低いレベルです。(図1)
これは予想外の大変好ましい状況です。クリスマスや年末・年始の人の往来で感染者増加は必須ですが、ベースが低い分、流行の拡がりは小さいからです。同時に医療の余裕度も高いので、第六波の際のように治療を受けられずに死亡する「事故」は避けられます。

残念ながら、横浜駅の高島屋では、12月6日、9日、18日と連続的に発生しました。
全国的にも12月からは明らかに発生増加に転じています。(図2)
そろそろ第六波が来るぞ、というところです。

図1  新型コロナ日別感染者数の推移(全国)(第一波から第六波)

2. オミクロン株の登場
私たちの土台もか細くなっています。一つは抗体量減少によるブレークスルー感染であり、一つはオミクロン株の登場です。
オミクロン株の感染力は、英国の報告では、デルタ株と比較し、3.2倍の家庭内感染、感染する濃厚接触者は2倍とされており(*1)、京大の解析では、デンマークのオミクロン株の実行再生産数はデルタ株の約4倍であったと報告されています(*2)。

(*1)新型コロナ「オミクロン株」感染しても重症化しにくいって本当?現時点で分かっていること (忽那賢志  12月11日)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20211211-00272142
(*2)オミクロン株 「実行再生産数」デルタ株の約4倍 (テレ朝ニュース12月17日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000238692.html

図2 11月からの新型コロナ日別感染者数(全国)
  (12月から増加に転じました)

3. マスクの効果とブースター接種の必要性
そもそもデルタ株ではワクチンなしでは1人が7~8人を感染させる、風疹のような空気感染と同等の感染力と言われています。その2~4倍の感染力ですから、オミクロン株は「強い空気感染力」を持っていると言っても過言ではないでしょう。接触感染も当然従来より強力なはずです。
なお、騒ぎを恐れてか、マスコミでは「オミクロンは空気感染」という話題を避けています。

以前のブログで説明しましたが、富岳シュミレーションの結果を使った単純なかけ算により、発生・受動の両者ともマスクする相互マスクでは、1/16のウイルス削減効果があることがわかります。(もちろん、品質の良い不織布マスクを隙間なくきちんと装着していることが前提です。片方だけなら、発生側は1/5、受動側1/3の効果しかありません。)
デルタ株では、感染力を凌駕する相互マスク効果に、ワクチン接種による抗体が加わっていました。いい加減マスクの人でもワクチンで感染防止できました。
一方、オミクロン株は、前述した感染力により1人が14~32人を感染させる能力があるので、相互マスクによるウイルス削減効果だけでは、明らかに力不足です。無症状感染者が鼻出しマスクの場合などでは、こちらがきちんとマスクをしていても1/3効果しかないので、しっかり感染します。
オミクロン株に対しては、マスク着用に加えて、抗体量を大幅に増加させる3回目のブースター接種が必須なのです。

4. 加害者にならないために
ここ2ヶ月で3回ほど横須賀線と東海道線を往復利用しました。緩んできているのがよく分かりました。鼻出しマスクの人や車内食事でしばらくマスクを外す人が車両に必ずいました。最近乗った横須賀線では、そこそこ混んでいる中、日本人おばさん2人が横長シートに座り、2人ともマスクせずに平気で世間話をしているのは衝撃的でした。すぐにその車両からは離脱しました。
バス内でも、鼻出しマスクのまま、咳をしたり鼻をかむ乗客のおっさんが必ず複数人いました。ほとんどの人がマスクをしている中、彼らはすごく堂々としていました。ワクチンを打っているから問題なしという思い込みかあるように感じられますが、自分の信念だけでは、他人に感染させた際の責任を取ることができません。
横断歩道に人がいないと確信して赤信号無視で突っ切っり人身事故を起こす車の運転手と同じです。新型コロナの違いは、即時ではなく、感染がわかるまで数日以上かかることと、感染相手が不明なことです。加害者であるのは人身事故の運転手と同じです。
新型コロナでも、加害者とならないためのリスク管理をする。それが、少なくとも不織布マスクをしっかり着用することです。100%の効果はないですが、個人的に必ずできて、唯一ともいえるリスク対策です。
鼻出しマスクの人は、自分が情弱かつ自己中であることを、「積極的に」アピールしていることを自覚すべきです。チャックが開いたままと同じで、恥ずかしいことです。
また、当然ながら、彼らはすぐに感染しやすい人たちです。その人たちとは出来るだけ距離を置くのが対策ですが、バス停では無自覚にも距離を詰めてくるので、困りものです。
こうした事情で、オミクロン株では、通勤混雑により感染者が急激に増え、トラブルも増えると思われます。
私は、今後も平塚方面の用事があり、横須賀からは遠いのですが、第六波が収束するまでは電車やバスにはいっさい乗らず、何時間かかっても自転車を使うつもりです。

なお、鼻出しマスクの人は世代に関係なく一定数見かけます。子供、生徒や高齢者は理知的な判断が難しいので仕方がない面もありますが、健康そうな若い人や働き盛りの中年でもそこそこいるので、どういうつもりなのか詰問したくなります。

5. 深刻な症状となる危険性も
注意しなければならないのが、新型コロナは風邪の一種ではなく肺も含めた多臓器感染症ということです(*3)。
武漢ウイルスと呼ばれた当初から肺炎だけでなく内臓や脳で症状が起きたことが報告されています。
新型コロナウイルスが結合するACE2は臓器各所にあるからです(*4),(*5)。
オミクロン株は今のところ重症化がみられないようですが、長く続くやっかいな後遺症(*6)はおそらく変わらないと推察されます。
感染メカニズムは同じで強力化しているだけですから。

(*3)「新型コロナ死者、全身にウィルス」WHO諮問団員・西條氏に聞く (毎日新聞12月12日)
https://mainichi.jp/articles/20211211/k00/00m/040/250000c
(*4)新型コロナで男性の性機能が低下、今わかっていること (National Geographic 9月28日)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/092800469/
(*5)新型コロナウイルスは、いかに感染し、そして重症化するのか? そのメカニズムが研究で明らかになってきた (SCIENCE 2020.04.19)
https://wired.jp/2020/04/19/covid-19-mechanism/
(*6) 新型コロナの後遺症Q&A どんな症状がどれくらい続くのか (忽那賢志  1月31日)
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210131-00220218

6. オミクロン株の到来に備える
いずれ日本国内でも、遅くとも年初にはデルタ株からオミクロン株への置き換えが起こり、相互マスクなしの会話では確実に感染することになるでしょう。家庭内感染や子供から大人への感染も心配だし、無症状の人も倍化するので今後急速な拡大が懸念されます。

 ワクチン接種と各段階の適切な治療薬とともに、良いマスクを良く装着したり、ピッタリ状態を二重マスクで長時間維持する、ソーシャルディスタンスや換気、特定紫外線での殺菌、手の消毒、使い捨て手袋の着用などの総合対策が必要です。特に換気は一層重要です。焼肉屋の吸込みファンのように空気の流れが縦であれば遮断している事と同じになります。但し、店外の排気口の近くはウイルスが高密度で吹き出される可能性があるので、その近くにたむろしてはなりません。

現在のワクチン担当大臣は、今までの発言からは役所の操り人形のようであり、国民のために先んじて適切な処置ができるという期待は持てません。最近、河野氏がワクチンは十分あるのになぜもたもたしているのかと厚労省を非難しました(*7)。姿の見えない担当大臣も同罪です。
抗体量は減り続けるので、ワクチン接種の間隔が開きすぎると、効果的な抗体量まで増やせるのか不安となります。本来は6ヶ月ですから。
前倒し接種が順調に進むことを祈るだけです。

(*7)河野氏、厚労省を批判 ワクチン接種加速求める (共同通信 12月17日)
https://nordot.app/844581298266505216

2021/12/20