マスクの効果と社会的距離でオリンピック感染から逃れよう!

穴が多いバブル方式でオリンピック開催による新型コロナ第五波は避けられそうにありません。でも、私達にはマスクと社会的距離や手洗いしか対策がありません。地味ですが、その効果をもう一度確認して、押し寄せる感染から身を守りましょう。

1. 今回のオリンピックの危険さ
絵に描いた餅のバブル方式
オリンピックが開催さようとしていますが、感染対策は不徹底です。
ブラジルで6月13日から開催のサッカー南米選手権大会はバブル方式を採用しましたが、クラスターが発生し選手スタッフの陽性者は140人を超えました。彼らの総数は約5千人ですが、今回のオリンピックの規模はその20倍です。
バブル方式とは、選手やスタッフを感染から守るために「バブル」内に感染者を入れない隔離処置です。日本では外国人からの感染を避けるためというイメージですが、選手からみれば、感染者増加中の危険な日本に来るわけで、日本で感染しないための処置が「バブル」方式というわけです。
もしも閉じたバブル内に感染者が入ってしまうとクラスターが起こり、ダイアモンド・プリンセス号の再来となります。
しかし、直近のウガンダ選手団の例は、バブル内に感染者と関係者を長時間一緒にして感染者を増やすという、誰が見てもいい加減な処置でした。あろうことか、それを五輪相は適切な処置だったと言い放つ始末です。
今後あり得る事態は、ブラジルでの教訓を活用できずに、バブル内外に感染者が出てクラスターが発生し、選手やスタッフが競技に集中できなくなる事です。
規模からすると、起きないはずはないというレベルです。

職域接種や大規模接種を強力に推進しつつ、ワクチンが足りなくなるのでちょっと待てと急に言いだす不始末ぶり。こうした日本の「杜撰さ」と何があっても「やり抜く」精神では、オリンピックで何が起きても不思議はありません。
期間中、医療スタッフが地獄となる可能性が大きいと思います。

新型コロナ変異株の感染力
7月後半に入ると7割がた置き換わると確実視されているインド株(デルタ株)の感染力は武漢ウイルスの2倍です。これまでと同じ行動では、西村大臣の言う通り、「マスクをしていても感染」する可能性が高くなります。
そして、オリンピックでクラスターが出た後に選手村に入るパラリンピックの選手たちは果たして安心・安全を満喫できるものなのでしょうか?

参考資料:
五輪バブル方式は穴だらけ?デルタ株流行で都内感染者1日3000人予測も (7月1日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c8a2403acb85c6ae6a3224915b533b21b17ce110
五輪開催中の東京で「命の選別」せざるを得ない事態も 西浦博さんが分析する医療崩壊のリスク
 (6月27日)
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura-20210625-1

2. マスクをしていても感染する?その1
マスクはどんなマスクでもいいし、どんな付け方でも良いわけでは全然ありません。
マスクの種類と効果
スパコン「富岳」のシュミレーションでは、不織布マスクが効果的です。また、国立病院機構仙台医療センターウイルス疾患研究所長の西村医師による実験でも、不織布マスクの飛沫吸込み量は10%未満に減少する結果が得られています。一方、ガーゼマスクやポリエステル/ウレタンマスクは吸込み飛沫量が50%を超えていて、マスク効果が薄いことが分かります。特に2um以下のマイクロ飛沫はほぼ効果なしと言えるほどです。
簡単に言って、不織布マスク以外は新型コロナウイルスの防御効果は怪しいと言って差し支えないでしょう。
マスクの「規格」
上記は、マスクの種類で性能を見たものですが、もちろんマスクの性能を規格化した区分もあります。
一般財団法人カケンテストセンターで試験するものですが、飛沫、微粒子とサイズによって、BFE,VFE,PFEの3つがあります。これらをパスしていれば、コロナウイルスに対してフィルター効果があることが示されるので、この記載があるものを購入すべきです。
また、「全国マスク工業会」のマークは製品信頼性を付与するものですので、このマークのない製品は避けるべきです。

(注)上記試験はマスクメーカーが提供したマスク材料によって行われるサンプル試験です。製造したマスクで上記試験による全数出荷試験はしていません。よって、実際の製品が試験性能を保持しているかは不明です。
欠陥はつきものとみて、異なるメーカーのマスクを重ねて使うのは、欠陥を補う良い方法です。あるいは、メーカー信頼性に着目し、日本国内製造品を選択することも推奨されます。

参考資料:
バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)・ウイルス飛まつ捕集効率(VFE)試験
(JIS T 9001・ASTM F 2101)
https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/34
微小粒子捕集効率(PFE)試験(JIS T 9001・ ASTM F 2299)
https://www.kaken.or.jp/test/search/detail/98

二重マスクの意味: それほど息苦しくはならない
河野大臣がしているのが、二重マスクで、米国CDCの推奨です。スパコン「富岳」のシュミレーションでは、二重マスク有無しで効果はあまり変わらないとしていますが、二重マスクの利点は、持続的にマスクの隙間を最小限にできるという事です。
長時間のマスク装着では、位置ずれしたり、緩んだりで、マスクの隙間が増大して、吸込み/吐き出し飛沫量が増えてきます。二重マスクではあまりずれや緩みがないので、初期の効果を維持しやすいです。
欠点は、息苦しいと言われますが、実際にはそうなりません。多少の空気抵抗は増えますが、目の細かさは同じなので、目詰まりするわけはなく、普通の呼吸では気になりません。二重装着による密着/圧迫感は当然あり、隙間からの空気の流通も減るので、そのことが息苦しいと勘違いするのだと思われます。
隙間を最小限に維持するので、マスク効果を向上させると言えます。上側にするのは、きちんと押さえられるならどんな種類のマスクでも構いません。推奨します。
前節(注)で示したように、マスクの欠陥を補う目的でも二重マスクは有効です。
なお、当たり前のことですが、顔にフィットさせずにマスクを着けるなら、何枚重ねようと無意味です。

マスクの相乗効果:  みんなマスクで地域を1/16の感染リスクに下げよう!
みんながきちんと不織布マスクを装着すると世界が変わります。
シュミレーション結果では、吸込み量30%、吐き出し量20%であるので、ウイルスを持つ人から受け取るウイルスの吸い込み量は、マスクなしと比べ、0.3 × 0.2 = 0.06 すなわち、6%のみの吸込み量に減ります。つまり、感染リスクは1/16に減ります。すごいですね!
感染力が倍でも、互いにマスクをしているなら感染リスクは1/8です。
もし、マスクが片側だけ、受ける側だけなら30%なので、リスク低減は1/3であり、倍の感染力の場合は、1/1.5とマスク効果が微々たるものになります。
しかし、お互いにしっかりマスクをすると劇的な効果が生まれます。
これに注目した記事は見かけませんが、以上のように、「みんなマスク」の効果は明白です。

マスクの装着の適切さ
一方、1割程の方が適切にノーズフィッターをセットしないか、鼻出しマスクをしています。本人の意識がよくわからないのですが、マスクの意味がありません。同調圧力だけでマスクをしていて、マスクの効果や感染の悲惨さを自覚していないと思われます。
高年齢で鼻出しマスクをしている人は、本当に問題ないと思っていそうです。
尾身会長も当初は鼻が出たり隙間があったりのマスクをしていました。現在は修正してどこも隙間がないほどぴっちりとしたマスク装着をしています。
言われないと自覚できないのかもしれませんね。
マスク警察と言われても、相乗効果を得てみんなを守るためにマスクのきちんとした装着を声かけする人がどうしても必要です。

3. マスクをしていても感染する?その2
社会的距離こそが基本的対策 :  マスクだけでは感染は防げない!
しっかりマスクをした上に、もっと大事なことは社会的距離をとる事です。
マスクはリスクを大きく下げますが、特にデルタ株では、ウイルスを吐き出す無症状感染者のそばに5分もいれば、マスクの隙間からその餌食になる可能性があります。
マスクにより、単位時間当たりのウイルス吸込み量が減っても、時間が経過する分だけトータルの吸込み量が増えるからです。感染はウイルスの感染力とウイルス量で決まります。マスクなしで早く感染するか、マスク有りで感染を遅くするかの違いです。長い時間いなければマスク有りでは感染しないとも言えます。

だれがウイルスを出しているかは分かりません。確実なことはウイルス飛沫が届かないところまで他の人から離れる事です。それが社会的距離(少なくとも2m以上)です。
そこまでできないと言う人は多いですし、実践している人は少ないです。スーパーのレジなどでは全く意識もされず、以前通りにひっついて列をなします。仕方がないですか?感染して構わないのですか?
葛藤があっても、別の人が何事か?と眉をひそめても、身を守る一番の基本、「他の人と距離をとる」ことは、誰でもわかり簡単で、効果的な手段です。一方、本来、マスクは、短時間、他人と距離を縮める必要があるときに役立つものなのです。なお、マイクロ飛沫/エアロゾルは長時間広範囲に漂うので、その対策としてマスクの常時着用が必要となります。
しかし、マスクだけでは完璧に防御できないから、社会的距離で飛沫から遠ざかり、換気でウイルスの少ない空気に入れ替えることも励行されるのです。

高齢者はマスクなしで人にうつすな!今マスクを外すのは愚かな行為
これから増える問題が一つあります。高齢者がマスクなしで出歩く事です。
彼らは2回ワクチン接種したから、感染しないと思ってマスクを外すのでしょうが、それは二重の間違いがあります。
ワクチン接種しても新型コロナに感染します。ただ、感染しても軽症で済む可能性が高いのです。無症状になることも多いでしょう。つまり、無症状感染者です。但し、体内でウイルスの増殖が抑えられるので、症状が目立たないのです。
一方、感染するので、多少なりともウイルスを吐き出すはずです。もし、そばにワクチン未接種で体が弱い人がいたら、その人に感染させる可能性があります
これからも感染せず、従って人にも移す機会を最小限にするには、ワクチン接種後もマスクを今まで通り励行しなければなりません。
はしゃいでマスクをとるとは人迷惑でもってのほかです。

引き続きマスクの着用を。ワクチン接種を終えた人々へ、尾身会長から7つのお願い
https://news.yahoo.co.jp/articles/5555a1508a65f18742d7a80ce1fbe2b46471a8f4

横浜港に停泊したダイアモンド・プリンセス号乗員約3700人中、712人の感染者と13人の感染死亡者が出た。
感染者単純致死率は1.8%で、現在の日本の累計感染致死率も同じく1.8%である。
スパコン「富岳」によるシュミレーション結果
不織布マスクが効果的であることを示した
西村医師による飛沫吸込み量の実験結果
感染飛沫サイズでの不織布マスクの有効性を示している
マスク外箱での試験規格表示例
BFE, PFE, VFEについて記載あり
マスク外箱の「全国マスク工業会」のラベル
厚生労働省の啓発ポスター
厚生労働省の啓発ポスター
社会的距離の確保: 2m
尾身会長から、ワクチン接種を終えた人々に7つのお願い
マスクを着用することと大人数飲み会を控えること
2021/7/4